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もしも「日本の原発」がすべてストップしたら

プレジデント 2011年4.18号 百瀬 崇/ロイター
もしも「日本の原発」がすべてストップしたら
東日本大震災に伴う、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故。日本中がその行方を見守った。

日本の電力源は火力が約60%、原子力が約30%だが、危機回避のため海水を注入した福島第一原発の再開は困難に。電力源を断たれた日本は、このまま立ち枯れるのだろうか。※内容はすべて雑誌掲載当時

原子力発電所の抱える問題が浮き彫りに――。東日本大震災に伴う、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故。日本中がその行方を見守った。
原発事故は、国際原子力機関(IAEA)が決めた8段階の国際原子力事象評価尺度(INES)で深刻さが示される。

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地震と津波によって想定外の事故を起こし、
白煙を上げる、東京電力福島第一原子力発電所。
(DigitalGlobe/Getty Images=写真)

事故が起きた翌日の3月12日夜、経済産業省原子力安全・保安院は今回の事故は「暫定的に(INESで上から4番目の)レベル4」との見方を示した。だがアメリカのシンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)は3月15日、福島第一原発の状況はレベル6に近く、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じ最も深刻なレベル7に達する可能性もあると指摘した。

エネルギー産業事情に詳しい一橋大学大学院商学研究科の橘川武郎教授は、「レベル4で止まるか、レベル5を超えるかでは大きな違いがある」と話す。

「レベル5のスリーマイル島原発事故の後、アメリカの原子力開発はほぼ止まっている。一方、レベル4のサンローラン原発事故を起こしたフランスは、その後も精力的に原子力開発を行っています。レベル4と5の差は、その後の原子力政策に大きく影響するのです」(橘川氏)

つまり、レベル5を超えると原発に対する世論の風当たりが強くなり「そんな危険なものはなくしてしまえ」といった声が大きくなるというのだ。他方、東京電力の「計画停電」で電車の運行本数が減り、家庭の電気器具が使えなくなった。これは福島第一・第二原発がストップしたことが主要因で、人々の生活がいかに原発に依存しているのかを示した格好だ。

危険視されながらも需要に大きな貢献をする原発。現状、人々の感情や政治勢力は「ゼロか100か」と極端な見解を示す場合が多いが、「原発のリスクを認めつつ利用し、一方でどうやって電力需要を抑えるかといった大人の議論を始めなければならない」と橘川氏は指摘する。

その後、3月18日、原子力安全・保安院はINESの評価を「レベル5」に引き上げた。今後、大人の議論の必要性がますます高まるだろう。

また今回、福島第一原発は津波の被害を受けて危機に陥ったが、同じく東北地方の太平洋沿岸に位置する東北電力の女川原発は、大きな事故を起こしていない。これは大きな注目点だ。

「女川町自体は壊滅的な被害を受けているが原発は無事。それどころか原発が避難場所になっている。偶然助かったのか、津波対策が功を奏した結果なのか。今後の検証が待たれるところです」(橘川氏)

現在、日本の電源は火力が約60%、原子力が約30%。政府の2010年エネルギー基本計画は30年までに原子力や太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギー由来の電源、「ゼロエミッション電源」を70%にまで拡大させることを目標としている。

「目標の70%のうち約50%が原子力で、約20%が太陽光や風力などの原子力以外の電源。政府はCO2削減のためこの目標を立てているが、国内で原発抜きにゼロエミッション電源の依存度を高めるのは無理なやり方」と橘川氏は話す。

史上初の計画停電はなぜ行われたのか

CO2は国内だけでなく世界全体で減らせばいい、と橘川氏は指摘する。例えば日本の火力発電の技術を海外へ輸出すれば、CO2は大幅に減らせる。

「太陽光や風力が電力の一部を本格的に担うようになるには、あと30年ぐらいかかる。21世紀の前半は原子力発電に頼るしか選択肢がない。原子力発電で時間を稼ぎ、その間、技術革新で太陽光発電や風力発電を現実的な選択肢にするのが人類の知恵だと思います」(橘川氏)

また橘川氏は、火力発電が過小評価されているという。エネルギー基本計画では、30年までに原子力を全体の50%に高め、火力発電の割合を30%にまで減らすことになっているが、今回のような爆発事故が起きると、その電源構成では致命的なダメージを受けるからだ。

「アメリカでは、新たな天然ガス、シェールガスに注目が集まっています。一時期、アメリカでも原子力が見直されつつあったのですが、シェールガスの登場で、再び火力発電に力が注がれるようになった。シェールガスはエネルギー産業に大きな変化をもたらすものであり、今回の爆発事故で原発が見直される場合、その代替となりうるでしょう」(橘川氏)

また海外では「ガス&パワー」という、ガス会社と電力会社が合併する動きが出てきている。独占禁止法の問題をクリアする必要はあるが「供給側も消費者も一社で電気とガスを賄える、ある種の現実的な選択肢」(橘川氏)ともいえそうだ。

今回、関東地方を中心に実施された計画停電。1951(昭和26)年に、9電力体制(現在は、沖縄電力を入れた10電力体制)が出来て以来、初の試みだ。

東京電力は、すべての発電所がフル稼働した場合、6400万kWの電力を供給できる能力を備えている。そのうち大きな発電力を持つブロックは3つ。1つめは合計910万kWの発電力を持つ福島第一・第二原発。2つめは福島県から茨城県にかけて点在する広野・常陸那珂・鹿島火力発電所で合計920万kWの発電力。3つめが新潟県の柏崎刈羽原発で本来、820万kWの発電力だが、07年に起きた中越沖地震の影響で現在は490万kWを供給している。今回は、この3ブロックのうち、福島第一・第二原発と、広野・常陸那珂・鹿島火力発電所の運転がストップ。結果、東京電力は計画停電を行わざるをえなくなった。

中越沖地震で柏崎刈羽原発が運転できなくなった際は、東北電力から電力が供給され、計画停電は行われなかった。だが今回は、東北電力の東通原発と女川原原発の運転がストップしており、東北電力の助けを受けることはできない。

50Hzと60Hzで周波数の異なる西日本の電力会社からは電力を十分供給してもらえない。また、北海道電力と東北電力をつなぐ連絡線は一旦直流に戻さないとならないため、多くの電力をやりとりできない。つまり「東京電力が電力を自由にやり取りできる東北電力から電力を供給できないため、計画停電を行う以外に方法がなかった」(橘川氏)のだ。

危機回避のために海水を注入した福島第一原発の運転再開は困難。ほかの原発もすぐに立ち上げられないなか、比較的早く運転再開できると考えられるのが広野・常陸那珂・鹿島火力発電所だが、これも一筋縄にはいかない。3つの火力発電所のうち、常陸那珂を除く2つは、主に重油を燃やして発電している。重油は安定的な供給が可能なものの、それを運ぶタンカーを急遽、増やすことが容易ではない。重油と白油とでは粘度が異なり、一度、重油を運んだタンカーは、より需要の高い白油を運べなくなる。そのため、重油の需要が増えても、それに見合う数のタンカーをすぐには用意できないのだ。

近年、電源構成のなかで原子力の割合が高くなるにつれて、重油を運ぶタンカーの数は激減していた。だが、今回のような災害が起きた際、原子力発電に比べて火力発電のほうが早く回復できる柔軟性を持っている。再度、その特徴を見直してもいいのかもしれない。

また、橘川氏が懸念するのが、今回の爆発事故で「被曝」という言葉が「被爆」と取り違えて受け取られていることだ。

「“ヒバク”という言葉はインパクトが強い。体内に入って初めて“被爆”したと言えるのであって、今回の爆発事故での“ヒバク”は、体外についた“被曝”です。マスコミや政府は、周辺住民の健康を懸念して“ヒバク”という言葉を使っているのでしょうが、使い方に気をつけないと最終的に困るのは風評被害を受ける地元の農民や漁民です」(橘川氏)

今回のように電力の供給が止まったり、計画停電になった場合、生活者レベルでどのような対応ができるのだろう。社会安全研究所の首藤由紀所長は「災害が起こる以前、普段から3日間は電気や水がなくても暮らせるための備えをしておくことが重要だ」とアドバイスする。また計画停電の際は節電が重要。それにより停電時間を短くすることができるからだ。

「こまめに照明を消したり、利用していない電気機器のコンセントを抜いたりといった些細なことでも、積もり積もれば大きなものになります」(首藤氏)

電気が使えない際、頼りになるガス機器だが、ガス風呂給湯器や100V電源を使用しているガスコンロ、ガスファンヒーターなどは電気で制御されているため停電中は使えないものが少なくない。東京ガス広報部は「停電中に使えるガス機器があっても、換気扇が作動しない場合や、夜間はガス機器がよく見えずに操作を誤ることがあるので、十分注意して使用してください。また必ず換気が確保されるようにしてください」と強調する。

自然の猛威を見せつけた震災。二度と起きてほしくないと願うと同時に、普段から備えておくことが肝心だ。
※内容はすべて雑誌掲載当時
ロイター http://president.jp.reuters.com/article/2011/04/25/9D1E0B20-69A0-11E0-981B-30113F99CD51.php


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